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なぜ、日本でキリスト教が広がらない?

「西洋文化の根底にはキリスト教がある」「キリスト教が理解できないと、本当のところで西洋的価値観がわからない」とよく言われますが、出口さんはヨーロッパで仕事をされて、キリスト教を理解することの大切さを痛感したことはありましたか? もしあったとすれば、それはどのようなときでしたか?

また日本は、キリスト教各教派の熱心な伝道活動や、ミッション系の学校が数多く設立されているにもかかわらず、キリスト教が一向に広がる気配がないのはなぜだと思いますか? そして、そのことは日本のビジネスにどのような影響を及ぼしているとお考えですか?

最後に、おすすめのキリスト教の入門書を3冊挙げていただければ幸いです。

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44歳 会社員 男性

広がっていないのは、キリスト教だけではありません

僕は歴史や宗教や美術が大好きで、たくさん本を読みたくさん旅をしましたが、その経験がヨーロッパやロンドンで仕事をしているときに、外国人とコミュニケーションをする際に大変役に立ちました。なぜなら、人間と人間のコミュニケーションは共通テクストがベースにあるとうまくいくからです。つまり、相手の人が宗教に興味があり、僕も宗教に興味があれば、ふたりの間には宗教という共通テクストが成り立ちます。

ビジネスがうまくいく秘訣は“互いをよく理解し合うこと”にありますが、その一番のポイントは、お互いの共通テクストが多いか少ないかによります。その意味で僕が歴史オタク、宗教オタク、美術オタクであったことは、ロンドンで仕事をする上で、あらゆる場面で役に立ちました。相手との距離が、あっと言う間に共通のキーワードひとつでつながったからです。例えばキリスト教について、「あれはパウロの宗教だよね」と言うだけで、互いに「おれもそう思うんだ!」と距離が縮まります。

それから、日本でなぜキリスト教が広がらないのかという質問は、なぜ仏教やイスラム教が広がらないのか、という質問と同じだと思います。戦後の日本のように、相対的に社会の運営が上手くいき、高度成長をして物質的に満ち足りた世界ではなかなか宗教は広がらないのであって、キリスト教だけが広がらないわけではなく、仏教もイスラム教も同様に広がっていないと考えるべきだと思います。また、そのことがビジネスにどの様な影響を及ぼしているのかは無関係だと思います。

入門書3冊ですが、次の通りです。

(1)山我哲雄『キリスト教入門』(岩波ジュニア新書)

(2)矢内原忠雄『キリスト教入門』(中公文庫)

(3)フォイエルバッハ『キリスト教の本質(上・下)』(岩波文庫)